生活習慣病管理料の有効活用

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 メタボリックシンドローム診断基準を用い,一般住民健診、企業健診においてメタボリックシンドロームの該当者をまず診断することが求められる。健診を通して「おなかに脂肪がたまっていることが、高脂血症や高血圧,糖尿病になりやすい状態」であることを伝える。さらに「これらの疾患が重なったとき,最終的には心筋梗塞や脳卒中を起こす可能性がある」ことを認識してもらう。

 メタボリックシンドローム該当者に対して、地方自治体では保健師が中心となって重点的な保健指導を行うことになっているが、本症は心筋梗塞、心臓突然死、脳梗塞を発症する可能性が高いハイリスク群であり、逆に指導時の安全性の確保からも医療機関が中心的役割を果たすべきものと考えている。


 医療機関では、個人個人の“かかりつけ医”として、保険医療として認められている「生活習慣病管理料」の積極的活用を行う。
 企業健診においては、契約産業医が健診結果からメタボリックシンドローム該当者を診断する。労災保険
2次健診制度を積極的に活用し、労災保険認定医療機関に紹介する。

 このように健康診断はメタボリックシンドローム患者の割り出しの最前線
(スクリーニング)であり、将来の心筋梗塞および脳梗塞発症の原因であるアテローム性血栓症の予防指導が医療機関の役割となる。

今後、国民医療費の高騰の中、住民健診、企業健診における癌およびメタボリックシンドロームの早期発見・早期治療が予防医療の主流になるものと考えている。



「生活習慣病管理のための療養計画書」

 
 保険医療として認められている「生活習慣病管理料」には、高血圧、高脂血症、糖尿病の中から主疾患を一つ選択し、生活習慣改善に関する指導内容について
3ヶ月ごとに「療養計画書」を作成して患者との間で実施契約を交わすことになっている。

  3ヶ月間の生活習慣の改善目標を患者との間で「約束事項」として確認する。約束事項は患者が実行できると約束した項目であり、患者とかかりつけ医との間で取り交わした生活習慣の改善内容の同意書である。

 療養計画書の作成には、1)問診:家族歴、運動習慣、食習慣、喫煙習慣、2)身体計測:身長、体重、BMI, 臍周囲径、体脂肪率、安静時血圧、3)血液生化学検査、4)安静時心電図、運動負荷心電図、運動時血圧、などの基本データが必要である。
  その基本指導内容は、第1次治療として、生活習慣の改善を指導する。(1)適度なカロリー制限 (2)適度な身体活動量の増加、(3)食事内容の変更、(4) 最初の1年程度で5〜10%の体重減少、である。

 メタボリックシンドロームに対する生活指導は、従来のような標準体重にまで減量することではなく、一年間で体重の
5%〜10%の減量を食事内容と有酸素運動により達成する実現可能な目標設定である。
 
  具体的には運動療法を始める前に、高血圧治療ガイドライン2004の基準に従って危険因子に基づいたリスク評価を行い、日常生活上の安全運動強度の上限を決定する。日常生活における内臓脂肪を燃やす有酸素運動として脊椎ストレッチウォーキングを指導する。安全面対策として、運動前の水分補給の指導を徹底する。

 生活習慣の改善が十分でなく、あるいは改善されても心血管疾患の危険因子の軽快が見られない場合には第2次治療として、高血圧、脂質代謝異常、高血糖(インスリン抵抗性)などの病態に薬物療法を行う。
 しかし、薬物療法は、あくまで対症療法であり、生活指導時の安全性を高めるためのものであり、内臓脂肪を減少させる生活習慣の患者指導を怠ってはならない。


  栄養指導には、食習慣についての簡単な問診項目の自動解析に基づき、全体の食習慣の偏りを指摘する。

  1ヵ月ごとの外来診察では、約束事項の再確認を行い、生活習慣改善の効果判定には身体計測よりも血液生化学検査が有効である。また、高血圧患者には、毎日の起床時と就寝前の2回の血圧、心拍の記録を習慣づけること大切である。

  3ヶ月後ごとにリスクの再評価を行い、新たな「療養計画書」を作成する。

  フィットネスクラブとの連携においては、健康スポーツ関連施設連絡協議会公認インストラクターの指導を受ける。


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