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平成30年夏の甲子園高校野球選手の熱ケイレンの原因は、
マグネシウム欠乏


  平成30年(2018年)の夏は、観測史上最高の極暑が日本各地で記録され、暑さによる熱中症患者に発生も過去最高記録を更新した。
  こうした極暑の中で開催された夏の高校野球で、試合中に選手がケイレンを起こし、試合が中断されたニュースが度々報道された。例年には見られない出来事であった。
  大会主催者側も熱中症対策を強化し、ベンチでの冷風装置、スポーツドリンクの提供を行っており、ベンチでの選手は、充分なほどスポーツドリンクも飲んでいるはずである。
  今回の特筆すべき点は、熱中症予防としてスポーツドリンクを飲んでいても、熱ケイレンは防げなかった点にある。
  熱中症分類として、T度:熱ケイレン、U度:熱疲労、V度:熱射病が上げられるが、T度熱ケイレンは、脱水症ではなく充分な水分補給ができている状態で起こる熱ケイレンである。一般的には過剰な水分補給による汗からの電解質喪失、特にナトリウム喪失による低ナトリウム血症が原因とされ、テレビ、新聞紙上で塩分補給を推奨されているが、私はこれに異を唱えている。
  筋肉の収縮・弛緩に関与する電解質は、収縮にカルシウム、弛緩にマグネシウムが関与しており、マグネシウム欠乏状態にて筋肉ケイレンが起こる。“こむら返り”も同様の機序である。低ナトリウム血症にてケイレンが見られるのは、昏睡の最悪状態である。ケイレンを起こした選手は救急車で搬送されていない。
  選手たちが飲んだスポーツドリンクには、ナトリウムの摂取はできたが、マグネシウムは僅かしか入っておらず、スポーツドリンクを飲めば飲むほど汗から喪失されるマグネシウムの補給にはなっていなかったためである。
 過去を振り返ると、2007年7月の世界陸上選手権大会の同じような極暑の中、末続選手ほか多数の日本人選手がケイレンを起こして不調を訴えたが、同じ環境でもなぜ外国人選手には見られなかったのか。外国人選手は、熱中症予防に水とマグネシウムを含有している岩塩を摂っているのに対して、日本人は、純粋の食塩を摂取していたためである。
  2008年1月4日の第84回箱根駅伝で、前年度優勝校の順天堂大学の小野選手がゴール前500mで痙攣を起こして動けなくなり、たすきを渡せず無念の涙を呑んだニュースもあった。
  これらの事件は、報道では脱水症として片付けられているが、単に水分と塩分(食塩)不足ではなく、マグネシウム摂取不足が真の痙攣の病態であることを知らなければならない。
  2020年の東京オリンピック・パラリンピックも夏の開催である、多くの日本人アスリートがマグネシウム摂取の重要性を認識し、積極的なマグネシウム摂取に心がけ、ケイレンを起こすことなく最高のパーホーマンスを発揮できることを願っている。

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