「あなたは愛する人を救えますか」
河村循環器病クリニック 院長
河村剛史

Vol.27:「健康夢ビジョン」
  21世紀の最初の年に第23回日本健康増進学会を開催できることは、誠に光栄に存じます。
  本学会の開催場所に淡路夢舞台国際会議場を選んだ理由は、7年前の阪神淡路大震災の震源地であったことです。大震災を機に日本にも命の危機管理意識が芽生えましたが、その後に、社会不安を増長する事件が増えてまいりました。9月11日にはアメリカ同時多発テロ事件と日本では狂牛病の発生が起こり、見えない敵(病気)から国民の命を守る国の危機管理責任が問われ、同時に個人にも自己防衛責任が求められています。
  健康に関しても、2000年から「健康日本21」がスタートし、1次予防を中心とした正しい生活習慣の啓発による国民の数値目標が掲げられ、全国的な啓発運動が展開されています。こうした国民運動は、個人個人の自己責任に基づいた生活習慣病予防であり、それに伴う国民医療費の増加の抑制が目的です。20世紀後半からの生命科学は、還元主義的志向で進み、2001年のヒトゲノム解読の金字塔を打ち建て
、「ポスト・シークエンス時代」に突入しました。21世紀は第4次産業革命ともいえる『生命革命』に向かって生命科学技術の発展が進行していきます。こうした生命科学技術が人間の病気の解明と予防に貢献できても「なぜ人間は健康でなければならないか」の本質的な健康ビジョンを示すことはできません。
  本学会のメインテーマである「健康づくりは人づくり、国のいしずえ」は、健康づくりとは国民の一人ひとりが自立した生き方をすることが、独立国のあるべき姿であると考えたからです。健康とは、人間の生きる喜びを感じる心の身体感覚であり、身体から感じる“心地よさ”がそのバロメーターなのです。21世紀型の学会のあり方として、教育講演、シンポジウム、学会長講演、鼎談、心肺蘇生法講習会
、脊椎ストレッチウォーキングなどをすべて健康づくり関係者のみならず一般市民にも公開し、すべての参加者が本来の健康のあり方を感じとれるような異種空間を演出したいと考えています。
  もう一つの試みとして、情報公開をキーワードにITセッションのみならず、学会中の教育講演、シンポジウム、学会長講演を全世界にインターネットを通じて同時発信する試みに挑戦したことです。学会の役目としての社会啓発は、その公開性にあるものと信じております。学会終了後には、インターネットによるオンデマンド発信にあわせて、CD-ROMの作成も予定しております。
  学会前日のシンポジウムを含め、多くの健康づくり関連団体が淡路夢舞台に終結し、それぞれの立場での「参画と協働」により大きな成果を上げられるものと確信しております。
  淡路夢舞台での皆様との直接の出会い、参加できない人とのインターネットを通したネット上での出会いを大切にして、21世紀に向けて「健康夢ビジョン」を発信したいと思っています。さあ、一緒に出発しましょう。

続く

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