「あなたは愛する人を救えますか」 |
河村循環器病クリニック 院長
河村剛史 |
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Vol.50:AEDを一般市民が使用しても、法的な問題はない。
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心臓突然死の原因である心室細動の唯一の救命法は、発症5分以内にすぐ隣の人がAED(自動体外式除細動器)を用いて電気的除細動を行うことである。欧米では、パブリック・アクセス除細動(PAD)と呼んでいる。
国の第3次構造改革特区として、「非医師による自動除細動器を用いた救命推進」を提案し、兵庫県を特区として認める要望を提出したことが直接のきっかけとなり、厚生労働省は2004年度から全国的に一般市民がAEDを使用できる方針を公式表明した。いよいよ日本においても、長年待ち望んでいた「お互いの命を守る社会づくり」体制がスタートする。
厚生労働省の見解は、一般市民がAEDを次の4つの条件等において使用する場合には、一 般的に医師法第17条に違反しないとした。
1.医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること。
2.使用者が対象者の意識、呼吸がないことを確認していること。
3.使用者がAEDの使用に必要な講習を受けていること。
4.使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること。
市民公開講座にて法律学者の見解を聞く機会があったが、もともと一般市民のAED使用には法的な問題はないとのことであった。
元来、医師法は、医師の業務独占を規定したもので、特に、医師法第17条には「医師でなければ医業をなしてはいけない」とされている。"医業"とは、"
医行為"を"業"として行うことで、"業"とは、営利目的の有無に関わらず、不特定多数のものに対して反復継続の意図を持って行うことで、緊急避難的行為は除かれる。また、"医行為"とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼす恐れのある行為とされている。平たく言えば、医療行為とは、医師が医学的判断と技術を用いて不特定多数の患者に反復継続して治療を行うことである。
一般市民が心室細動を起こした人に対してたまたまAEDを使用しても、緊急避難的行為とみなされ、医師法には違反しない。この点が、救急救命士が救急業務として同じAEDを反復継続して使用する場合("医行為"と見なされる)と大いに異なる。
また、AEDは心室細動のみを自動診断し、たとえ、意識のない正常心拍の人にAEDを装着しても、「除細動の必要ありません」の音声が発せられ、間違って除細動がかかることがないと認められた安全な装置である。すなわち、AED使用は「人体に危害を及ぼし、又は及ぼす恐れのない」行為です。
さらに、心肺蘇生法と同様、AED施行に対しても、民法の「緊急事務管理」が適応され、「法律的には悪意または重過失がない限り、善意で実施した救命手当ての結果に民事的責任を問われることはまずない」とした。また、刑事上も、救命手当は「社会的相当行為」として違法性を問われず、「注意義務が尽くされていれば過失犯は成立せず、その注意義務の程度は医師などに比べて低い」とした。
注目すべきは、厚生労働省のAED使用条件に、「医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること」が示されており、見方を変えれば、医師がその場に居合わせた場合には、まず、医師がAEDを使用しなければならないと読み取れる。兵庫県医師会が、2001年
11月から医師会員を中心にAED講習会を開催しているのは、将来、医師の"不作為"による道義的責任が問題になると考えたためである。
続く |
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