2000年に全世界に向けて発表された心肺蘇生法国際ガイドライン2000では、心臓突然死の原因の大部分は心臓の筋肉が細かく痙攣する心室細動であり、そばにいる一般市民がすぐさまAED(自動体外式除細動器)を使用して心臓の痙攣を取り除く電気的除細動( 電気ショック)を行うことが唯一の救命法であると明記されている。
心停止後、1分除細動が遅れるごとに約10%救命率が減少すると言われ、脳障害を起こさずに救命するためには、心室細動に対して心停止後5分以内にAEDによる早期除細動を行うことが必要である。もし、AEDが身近にない場合には、AEDが到着するまで心臓マッサージのみを行っておれば、除細動が8分以内であれば救命率50%を期待することができる。
平成16年7月1日に厚生労働省通達により、一般市民によるAED(自動体外式除細動器)の使用がついに解禁になった。その内容は、欧米の「グッド・サマリタン」(よきサマリア人の教え)にならい、たとえAED講習会を受けていなくても一般人がAEDを使用してもかまわないとの見解が出された。また、特定の機関、団体による画一化されたAED講習会ではなく、各種団体が講習内容の基準を満たせば独自の企画によるAED講習会でよいことになった。一般市民に対しては、できれば従来の心肺蘇生法の講習会に加えて、AEDの取り扱い講習を積極的に受講することを要望している。
兵庫県では、平成16年9月5日には神戸総合運動公園グリーンアリーナ神戸体育館において(財)兵庫県健康財団の主催によるAED県民普及500人講習会を開催する。予てから養成していた兵庫県医師会認定AEDインストラクター30人が河村剛史理事の指揮下に一般市民に「AEDを使用した心肺蘇生法」を指導する。
今後のAEDの普及啓発においても、心肺蘇生法の「意識の確認」が最も大切な啓発ポイントになる。極端に言えば、目の前で人が突然倒れ、意識がなければ、全員にAEDの電極パドルを傷病者の胸に貼り付け、AEDの音声指示に従えばよいのである。誰もがパニックに陥っている時に、AEDからの音声指示はパニックを沈めるだけでなく、適切な救命処置が行われることになる。
もし、心室細動であれば、AEDから「通電が必要です」、「患者から離れてください。通電ボタンを押してください」の音声指示があり、除細動ボタンを押せばよいのである。心室細動でなければ、AEDは「除細動の必要はありません」と音声で知らせてくれる。この場合には、心室細動以外の原因で意識がないと判断し、救急車の到着を待つだけの時間的余裕が生まれる。
AED普及県民運動は、「お互いの命を守る社会づくり」を目指した社会の「安全・安心」の基盤となる意識啓発の絶好の機会である。
1990年から5年計画でスタートした心肺蘇生法県民運動「命を大切に、あなたも心肺蘇生法を」を通して、兵庫県民は「心肺蘇生法」という名前を知ったように、まず、AED普及県民運動にて「AED」という名前を知ることが第一歩となる。
目の前で突然、愛する人が倒れたならば、すぐさま「意識と呼吸の確認」を行い、もし、意識と呼吸がなければ、“まず、AED ”で除細動を行い、手もとにAEDがなければ、AED、救急車が到着するまで心臓マッサージを続ければ愛する人の命が救えることを世間に広く伝えたいと思っている。
続く
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