長寿であるためには、まず、好きな時に自由に行動できる身体的活動力を維持してなければならない。その健康づくりの基本は、正しい姿勢で歩くことである。
背筋を伸ばし、膝を伸ばして、踵から地に着ける脊椎ストレッチウォーキング法は、高齢者に多く見られる腰椎障害、膝関節障害の予防になり、全身の筋肉を鍛える有酸素運動として最適である。
元来、日本は「座る文化」と言われるのに対して、ドイツの高齢者のように「死ぬまで歩きつづける」という執念、「歩きながら考える」哲学の道など、ヨーロッパでは「歩く文化」が基本になっている。当然、寝たきり老人はいないことになる。「自立」とは、自らの力で地面に2本足で立つことと考える。
長寿であるためのもうひとつは、この世に生まれた唯一の人としての「個の完成」である。人生の経験は、他人の存在を意識し、他人との関わりの中から「自分が何者か」を自問自答し、自分を磨き上げる好機である。この機会が多ければ多いほど他人ではない自分を知り、その経験が智慧として蓄積されるのである。
長寿者は、物事に対して独自の判断ができ、自分を信じている「自尊」の人である。「自尊」とは、自主性の尊重を意味する。もはや既存の宗教、思想、学問にとらわれることなく、自分の耳目にて得たものを自分の智慧にて判断できることが「個の完成」である。そして、この瞬間に初めて人は「生かされている自分の命を感じる」のである。
若者はこうした長寿者に人間の生き方の多様性を見出し、自己形成の糧にするのである。こうした長寿社会こそが、世代を超えた人間の個の多様性を伝達する社会形態である。
尊厳のある死に方は、自尊心のある生き方であり、よく生きることがよく死ぬことである。健康づくりは単に病気にならない予防策ではなく、死ぬ直前まで立ち上がり、好きな時にどこでも自由に行ける筋肉づくりと思う。これが、自立自尊の道である。
自然界においては、立ち上がれないことは死を意味する。人間は生まれてから立ち上がれるまで親の助けが必要である。2本足で立つには多くの姿勢起立筋の協調運動の日常訓練が必要である。いかなる病気になっても立ち上がる努力を怠ってはならない。
たとえ要介護者になっても本人に立ち上がる執念がなければ、介護は死に向かう道であり、生に向かう道にはならない。
私は、死の時を悟った時、渾身の力を振り絞って立ち上がり、「ありがとう」と叫んで死にたいと願って、毎日、脊椎ストレッチウォーキングを行っている。
続く
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